日本で使えるAI APIゲートウェイ比較 2026年9月版
複数のLLMを1つのAPIキーでまとめる「AIゲートウェイ」は、これまで実質的に海外サービスの話でした。それがこの4か月で変わりました。 2026年5月にOrcaRouterが日本での提供を開始し、8月25日にはGMOペパボがロリポップ!AIゲートウェイを出しています。
選択肢が増えると、比較の軸も変わります。「どのモデルが使えるか」だけでなく、日本の会社として買えるか — 円で払えるか、振込できるか、適格請求書が出るか — が現実的な判断材料になりました。この記事では5つのサービスを、その観点も含めて整理します。
なお、この記事は2026年9月2日時点の公開情報と、当社が同時期に確認した内容に基づきます。各サービスの仕様は変わるため、最終的な判断の前に提供元のサイトをご確認ください。FastMetalは当事者なので、そのつもりでお読みください。
比較する5つのサービス
| サービス | 提供元 | 位置づけ |
|---|---|---|
| OpenRouter | OpenRouter(米国) | 最大手。400以上のモデルを1つのAPIで |
| ロリポップ!AIゲートウェイ | GMOペパボ(日本) | 2026年8月25日提供開始。14社・58モデル |
| OrcaRouter | Continuum AI(米国)/FlashLabs(日本総代理) | 2026年5月に日本上陸。200以上のモデル |
| さくらのAI Engine | さくらインターネット(日本) | 国内ホストのオープンモデル推論API |
| FastMetal | 株式会社国際調達情報(日本) | 円建て・前払い。200以上のモデル |
さくらのAI Engineだけは厳密にはゲートウェイではなく、自社でホストしているモデルを売る推論APIです。ただし「日本の会社が円で買えるLLM API」を探すと必ず候補に挙がるため、比較対象に入れています。
軸1:通貨と支払い方法
意外に差が出るのがここです。
| サービス | 通貨 | 支払い方法 | 適格請求書 |
|---|---|---|---|
| OpenRouter | 米ドル | カード、暗号資産(購入時5.5%、最低$0.80) | 日本の適格請求書には非対応 |
| ロリポップ!AIゲートウェイ | 円 | 前払いチャージ(チャージ時5%+消費税)。銀行振込は非対応 | 公開情報に記載なし |
| OrcaRouter | 米ドル(最低$20から) | カード、暗号資産 | 円建て請求書・適格請求書対応をうたう |
| さくらのAI Engine | 円 | クレジットカードのみ | さくらインターネットとして対応 |
| FastMetal | 円 | カード、銀行振込(前払い)。どちらも¥500から | 対応(登録番号 T5010001015990) |
海外サービスをカードで払うこと自体は、個人開発なら何の問題もありません。面倒になるのは、経理を通すときです。 ドル建ての明細を為替で換算し、カードの海外事務手数料を按分し、適格請求書が出ないぶんの処理を考える — この手間は金額の大小と関係なく毎月かかります。
FastMetalが銀行振込(前払い)に対応しているのは、ここを丸ごと省くためです。振込を選ぶと、専用の振込口座を記載した適格請求書をその場で発行します。支払期限は14日間で、入金が確認され次第、自動でクレジット残高に反映されます(当社への連絡は不要です)。カードが使えない、あるいは稟議上カード決済を避けたい、という会社は日本では珍しくありません。
一方で、後払い(月末締めの請求書払い)はどのサービスも提供していません。 FastMetalも同じです。前払いのみなので、そこが要件なら現時点ではどれも合いません。
軸2:モデルの幅と提供元
- OpenRouter — 400以上。新モデルの追加が最も速く、幅では他を引き離しています。
- OrcaRouter — 200以上。チャットに加えて埋め込み・画像生成・音声にも対応。
- ロリポップ!AIゲートウェイ — 14社58モデル(2026年9月時点の公式サイト記載)。Anthropic、OpenAI、Google、Amazon、Meta、Mistral、DeepSeek、Alibaba、xAI、Z.AI、MiniMax、Moonshot、NVIDIA、Writer。
- さくらのAI Engine — さくらがホストするオープンウェイトモデル(gpt-oss系など)。ClaudeやGPTは含まれません。
- FastMetal — 200以上。クローズドなフロンティアモデルと、国内で処理が完結するモデルの両方。
ここで見落とされがちなのが推論の実行場所です。行政・金融・医療の案件では、プロンプトを国外に出せないことがあります。さくらのAI Engineは国内完結ですが、扱えるのはオープンモデルのみ。FastMetalはClaude SonnetとHaikuを国内リージョンの地理固定プロファイルで実行でき、LLM-jpや国内提供版のGemma・Qwen・Kimi、gpt-oss-120bは国内で動いています(対象はモデル一覧を参照)。
軸3:自動ルーティング — 同じ言葉で、違うもの
「自動でモデルを選ぶ」機能は、2026年に入って各社が持つようになりました。ただし中身は同じではありません。
- OrcaRouter — アダプティブ・ルーティング。分類モデルがリクエストの難易度を判定し、複雑なものは上位モデル、定型的なものは安価なモデルへ振り分けます。品質基準の振り分けです。
- ロリポップ!AIゲートウェイ — ユーザーが指定したモデルの中から、トークン単価が最も安いものを自動選択。障害時のフェイルオーバーにも対応します。候補をこちらで決めてから、その中で最安という形です。
- FastMetal —
modelにautoを指定すると、そのリクエストが必要とする機能(ツール呼び出し・画像入力・JSONスキーマ)を満たすモデルの中から、そのリクエストで最も安くなるものを選びます。候補を事前に指定する必要はなく、失敗時は次の候補へフォールバックします。 - OpenRouter — Auto Routerに加え、プロバイダー単位のルーティングとフォールバックを細かく制御できます。
どれが良いという話ではなく、求めているものが違います。 品質を落とさずコストを下げたいならOrcaRouterの考え方、使うモデルは決まっていて事故を避けたいならロリポップ、モデル選定そのものを任せたいならFastMetal、細かく制御したいならOpenRouterです。
軸4:扱えるモダリティ
テキストだけで足りるなら気にする必要はありませんが、画像や動画を扱うなら差が出ます。
- ロリポップ!AIゲートウェイ — 現時点ではテキストのみ。マルチモーダル対応は今後の予定として案内されています。
- さくらのAI Engine — テキスト、音声認識、埋め込み。
- OrcaRouter — テキスト、画像生成、音声。
- OpenRouter — 提供元により幅広く対応。
- FastMetal — テキスト・画像・動画の生成を、同じAPIキーと同じ前払い残高で。MCPサーバー経由でも同じ機能を使えます。
実際に呼んでみる
FastMetalの場合、既存のOpenAI向けコードはベースURLとキーを差し替えるだけで動きます。自動ルーティングを試すなら、モデル名に auto を指定します。
curl https://api.fastmetal.ai/v1/chat/completions \
-H "Authorization: Bearer $FASTMETAL_API_KEY" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"model": "auto",
"messages": [
{"role": "user", "content": "四半期の売上データを分析するSQLを書いてください"}
]
}'
モデルを固定したい場合は anthropic-claude-sonnet-5 のように実際のモデルIDを指定します。利用できるモデルと円建ての単価はモデル一覧と料金ページに掲載しています。
用途別の選び方
正直に書くと、次のようになります。
- とにかく選べるモデル数を最大化したい → OpenRouter。幅では他が追いついていません。ドル建てと英語での運用が問題なければ、これが基準です。
- すでにGMOペパボのサービスを使っている/テキスト生成だけで足りる → ロリポップ!AIゲートウェイ。チャージ時5%という料金体系は明快です。
- 品質を保ったままコストを下げたい/ガードレール機能をまとめて使いたい → OrcaRouter。難易度に応じた振り分けは、この中で最も作り込まれています。
- プロンプトを国外に出せない、かつオープンモデルで足りる → さくらのAI Engine。国内完結です。
- 円建てで、銀行振込と適格請求書で経理を通したい/画像・動画まで1つの残高で扱いたい → FastMetal。
まとめ
2026年9月時点で、日本のチームが選べるAI APIゲートウェイは実質5つあります。モデル数だけで比べるとOpenRouterが強く、経理まわりで比べると国内サービスが有利で、自動ルーティングは各社で中身が違います。
「どれが一番か」ではなく、自分の制約はどれかを先に決めるのが早道です。カード決済が通らないなら支払い方法から、国内処理が要件ならホスト場所から絞り込めば、選択肢は自然に1つか2つになります。
FastMetalは、円建て・前払い・適格請求書という前提で作っています。アカウントは無料で作成でき、無料モデルなら残高ゼロのまま試せます。ゲートウェイごとの詳しい違いは比較ページにもまとめています。
出典(2026年9月2日確認)
- ロリポップ!AIゲートウェイ:GMOインターネットグループ プレスリリース(2026年8月25日)、および公式サービスページ
- OrcaRouter:FlashLabs株式会社 プレスリリース(2026年5月20日)、および公開されているプラン情報
- さくらのAI Engine:さくらインターネット 公式サービスページおよびマニュアル
- OpenRouter:公式サポートページ
- FastMetal:自社サービス